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STONE COLUMN

2020. 6. 17

ライムストーンってどんな石?実際の石模様と施工例を紹介

ライムストーンってなんだろう?

Photo by Wil Stewart on Unsplash

ライムストーンという言葉、聞いたことはあるけれど、どんなものかはよくわからない・・・というご質問を頂くことが多いので、一度整理をしてみようと思います。

ライムストーンとは数ある天然石の分類の中の一つで、日本語では「石灰石」に分類される堆積岩の一種です。英語名表記はLimestoneです。太古の昔、海中で貝やサンゴの死骸が沈殿、堆積し、長い年月を経て固まった岩石です。ライムストーンは地熱による変成作用を受けていないため結晶化していないことが特徴です。(石材の分類についてはこちらをご覧ください)

一般的に言う「大理石」とよく混同される石種ですが、色や柄の幅は大理石よりも狭く、多くの石はベージュやグレーといった落ち着いた色をしているものです。(大理石と御影石の違いについてはこちらの記事をご覧ください。)

 

みなさま「鍾乳洞」という場所に一度は訪れたことがあるでしょうか?

小さいころ、私も山口県にある日本最大の鍾乳洞である秋芳洞を訪れ、その大きさに圧倒されました。この鍾乳洞を形成している岩石がまさにライムストーン「石灰岩」です。

 

(写真)鍾乳洞の写真 Photo by Vladimir Haltakov on Unsplash

ライムストーンは主成分が「炭酸カルシウム」です。炭酸カルシウムが雨水によって溶けて浸食され、内部が空洞の巨大な地下空間ができあがりました。気の遠くなるような時間をかけて地球が作りだしたもので、人工では作り得ない圧倒的な空間は訪れる人を魅了してやみません。

少しずつ浸食され現在の形になっているというストーリーや幻想的な雰囲気など、まさに地球の作りだした芸術といえますね。

ライムストーンの色と柄の特徴

ライムストーンの色の多くは「ベージュ」と「グレー」に分類されます。

熱変成を受けておらず、単調な色調が多いですが、大理石や御影石には無いやわらかな質感と素材感をもった石種です。そんなライムストーンの代表石種をご紹介します。

(写真上)ジュライエロー 柾目の挽板

(写真下)ジュライエロー 平目の挽板 切断する方向で石の表情が変わります。

 

ジュライエローはドイツで産出されるライムストーンで、ライムストーンの中でも特に人気が高く、建築建材に使用されることが多い石種です。ジュライエローはライムストーンの種別の中では吸水率が低く、硬度が高い為、他のライムストーンでは不可能な外部、外壁への使用が可能な珍しい石種です。

実際に「赤坂サカス」や「六本木ヒルズ」「東京ガーデンテラス」など、多くの建築物に外壁として採用いただいています。

また、名前のジュラにもあるとおり、ジュラ紀の地層から採掘されるのが特徴のこの石は、化石を多く含みます。大きなアンモナイトの化石が入っていることも珍しくないので、化石好きな方は施工物件を探してみるのも面白いかもしれません。

 

(写真上) 名古屋商科大学丸の内キャンパス

(写真下) 今秋開業する関ケ原古戦場記念館

(写真)モカクリームの挽板写真

 

モカクリームはポルトガルが産地のライムストーンで、落ち着いた色合いと流れるスジ模様が人気の石種です。規格タイルも多く流通しており、比較的安価に手に入ることもあって、こちらも目にすることが多い石種ではないでしょうか。ライムストーンは共通して言えることですが、研磨で磨き上げても大理石のようにピカピカにはならず、少しマットな質感を残します。手で触ってみるとしっとりしているんですね。

 

 

(写真) マニの挽板写真

 

マニはフランスで採掘されるライムストーンです。この石種は日本ではあまり多く使用されていませんが、あのルーブル美術館の建築に使用されている石として、美術の界隈では有名な石です。

(写真)ルーブル美術館の外観 Photo by Yeo Khee on Unsplash

(写真)マニの拡大写真 粒状の模様が入る

 

近くでみると、細かな貝柄が砕けた化石が堆積したものとみられる粒が見受けられます。グレージュな色合いはとても落ち着いた雰囲気で、美術を鑑賞するときの穏やかな気持ちにさせてくれる表情をしていますね。

(写真)グリスマスカレードの挽板写真

 

グリスマスカレードはスペインで産出されるライムストーンです。ライムストーンは比較的薄い色が多い中、グリスマスカレードは濃い色が特徴です。2013年より調達をしており、少しずつ施工される物件が増えてきています。

(写真上・下) グリスマスカレードの施工例(海外)

その他にもライムストーンの種類はまだまだあります。

以前に記事で紹介している

トープグレーストーン

も併せてご覧ください。

ライムストーンへのオススメの仕上げ

ライムストーンは密度が高くないため、研磨を最終バフまで仕上げても大理石や御影石の本磨きのような艶が出にくい石種です。ライムストーンの特徴である「やわらかさ」や「落ち着いた色合い」を生かすためには「水磨き」がオススメです。

表面に凹凸をつけるものであれば「ビシャン」や「スクラブ」の仕上げもマッチします。

(❗ ライムストーンは火を当てると割れてしまうので、J&Pなどの仕上げはできません)

 

ライムストーンを使用する際の注意点

(写真) ライムストーンの海外施工例 Photo by Sung Jin Cho on Unsplash

ライムストーンは吸水率が高いことに特に注意が必要です。

一部例外的に外装への採用が可能な石種がありますが、基本的には外部への使用は推奨しておりません。(ヨーロッパでは外壁に使用し、その経年変化も含めて石として親しまれています)文章冒頭にご紹介した「鍾乳洞」の事例を見て頂くとわかる通り、石灰石は雨水に「溶ける」性質をもっています。もちろん外装に使用して一週間で石が溶けて消えてしまった!!ということはあり得ないですが、長期間の使用の中で表面が少しずつ浸食されてしまいます。せっかく新築当時に綺麗に仕上がっていた石面が風化していくこともまた天然素材の魅力ですが、均一な美観を保ちたいという場合は是非内部に御使用いただき、外部には御影石(花崗岩)を御使用いただくことをお勧めします。

また、汚れが付くことを防止する為にも、内装であっても表面コーティングを塗布していただくことを推奨しております。表面コーティングについては用途や部位などの条件によって推奨する商材が異なりますので、御使用を検討させる場合はご相談ください。

※使用に適さない部位

・外部壁・床

上記にも記載しましたが、外部で水がかかる部分は石表面の艶ぼけ、劣化が懸念されます。

どうしても御使用される場合はあらかじめ変化が起きることを楽しむとしてご採用ください。

※一部、外構やエクステリア用に製造されているライムストーンの床材等は御使用いただけます。

 

・キッチンの天板

常時水がかかる部分ですので、水を吸うとシミになってしまいます。

また石が比較的柔らかい為、物理的な衝撃でへこみ・傷がつく可能性が高いです。

キッチンの天板に石材を検討する場合は、御影石かクォーツストーンをお勧め致します。

キッチントップの材料についてはコチラをご覧ください。

 

・浴室

浴室は常に湿気があり、どんどん石が水分を吸収します。

石の中の石灰分と反応し白華現象を引き起こしたり、カビが発生することもあります。

表面コーティングを施しても完全に湿気を防ぎ切ることはできないため、特に注意をしていただきたい場所です。

 

・玄関のタタキ床

雨で濡れた靴を脱いだまま置いておくと翌朝靴の模様のシミが出来ていた!、という話もあります。床面への採用は特に注意が必要ですね。

 

 

 

 

ライムストーンにシミがついてしまった時の対応方法

・石にシミができてしまった

石にシミが出来てしまったので、とれますか?というお問合せをよく頂くことがあります。

もちろんすぐにできます!とお答えできれば良いのですが、なかなかそうはいきません。石の種類や何がシミになってしまったのか、その部位はどんなところなのか等、様々な条件を確認し、最終的には現地を確認してからのご回答となります。きれいに除去できる場合もありますし、完全には取り除くことが出来ない場合もあります。まずはプロに相談して意見を聞いてみましょう。

石のメンテナンスのご相談やお困りごとも随時受け付けております。全国に支店・営業所がございますので、お気軽にご相談ください。

 

ライムストーンを購入するにはどうしたいいの?

ライムストーンを実際に購入したい場合は、WEBショップなどの通販サイトでも販売しており購入が可能です。

大理石 御影石 天然石販売のSt Garden

ライムストーンの価格はもちろん石種によって変わりますが、高級な大理石と比べると安価に購入できるものも多く、石をなにかに使ってみたいな、とおもっている方にはオススメできる石種です。

最近ではDIY用の資材としてホームセンターなどの店舗でも取り扱いのある商品もあるようです。

石を購入する際の基本的なことは下記の記事にまとまっていますので、こちらも併せてご覧ください。

 

まとめ

ライムストーンについて疑問は解決されたでしょうか?

ライムストーンについて「わからない」「もっと知りたい」ことがありましたら、弊社お問合せフォームでお気軽にご連絡ください。石、といえば「大理石」「御影石」が有名ですが、意外とみなさんの周りには「ライムストーン」も多く使われています。

是非街中を散策する際やビルに入った時にライムストーンを見つけたら触ってやわらかな感触を体験していただければと思います。