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STONE COLUMN

2021. 1. 15

石材の価格を構成する要素をご説明します

石の価格ってわかりにくい・・・

Photo by Brett Jordan on Unsplash

石材を建築やインテリアに使いたいけど、石の価格がわかりにくい・・・という問合せを多くいただきます。他にも

「石材の価格が一覧になった表をもらえますか?」

「大理石一枚の値段を教えてください」

といった問合せをいただきます。

 

石の値段は一言でいえば「時価」ですし、決まった単価が無い(既製品として流通しているものを除いて)ものです。今回は石材の価格がどのようにして決まるのかについてをお伝えできればと思います。

石材の価格表や相場ってあるの?

前述した通り石はその都度金額が変動するものなので、価格表というものが存在しません。そもそもなぜ価格が変動するのでしょうか。

その理由の一つは

石は天然の材料で、仕入れる時の為替レートや仕入れ先の経済事情などによって単価が変動するから

もう一つの理由は

その材料からどの大きさでどのくらいの量の製品を作るかで単価が変動するから

ということになります。

仕入れる原材料について

仕入れる原材料は大きく「原石ブロック」と「スラブ(板材)」に分かれます。

今回は「原石ブロック」についてみていきます。

現在建築等に使用される石材のほとんどは海外からの調達になっており、産地はイタリア・ドイツ・フランスなどのヨーロッパやブラジル・トルコ・インド・南アフリカなど世界中から仕入れています。石を調達する際は直接現地に行って材料を買い付けたり、現地のバイヤーと連携して材料を購入する場合もあります。もちろん一度購入した材料はその時のレートで原材料費が固定されますが、新たに同じ石を購入する場合は単価の変動が起こる可能性があります。そしてそれが最終的な製品の価格に影響を与えます。石は天然の素材であるが故、その良し悪しは模様や柄の良さ(これは主観的ですが)、傷や不純物などの含有率などによっても価格が変わります。それゆえに同じ名前の石でも価格にばらつきがでてくるのです。

大きさと厚み・加工の有無について

価格が定まらない二つ目の要因は、最終的な製品の形状と数量によって金額が変動する点にあります。建築やインテリアにつかう建材としての石材はその大きさや厚み、表面仕上げをその物件に合わせてオーダーいただいております。そのため、規定のサイズで切り出した既製品以外はすべて任意のサイズや仕様をお聞きした上で見積を致します。大きさ(数量)や厚みが変わることで原材料の歩留まり(その原材料からどれだけ製品がとれるかの割合)が変動し、表面仕上げや小口加工などによって加工費が変動します。

上記の2点が石材の価格がわかりにくくしている要因ですが、石材という素材の特性上どうしても避けられないものとなっています。

 

ここではざっくりとした石による価格帯の分類をお伝えできればと思います。

大理石と御影石の価格比較

石を大きく分類すると「大理石」と「御影石」に分けることができます。本当の意味での石の分類はもっと細かくあるのですが、今回はこの二つに大別してみてみます。

石の分類についてはこちらをご確認ください。

現在弊社には6,000㎥(16,200t)ほどの原石ブロックがあります。

これらの原材料の単価の分布をみてみると

縦軸:石種の数   横軸:材料単価/㎥

(弊社調べ(2021/1/8)、大理石178石種、御影石154石種、在庫原石の参考原材料上代単価(/㎥)での分布)

このような分布になりました。

大理石のコアな価格帯は20万~50万/㎥、御影石は10万~40万/㎥の中に多くの石種が分布しています。どちらの分類にも安価なもの、超高価なものが存在しますが、

・大きくは大理石のほうが御影石よりも高い

ということになります。

この価格はあくまで原材料の単価であり、大きな原石ブロックに対しての㎥単価です。

実際の製品はここから切断・加工の費用や輸送の費用を足したもので計算されます。

製品サイズと歩留まり・加工について

石の製品を作る際に必要な情報は、

・石種:どの石種を使用するか、石種によって価格が変わります。

・仕上:本磨き・水磨き・JP等各仕上げによって価格が変わります。

・大きさ:400mm角、600mm角、600×900mm等、大きさによって材料の歩留まりが変わります。

・厚み:20mm、30mm、60mm等、厚みによって材料の歩留まりが変わります。

・納品場所:最終製品を出荷する際にどこまでお送りするかで運賃が変わります。

・使用時期:使用予定がいつごろかで現在の在庫から制作するか、新規に海外から調達するかで材料代が変わります。

このような情報をもとに価格を計算し見積をします。

石種によって価格は変わる

石種のによる価格帯の比較は上で記載したように、ざっくりとした比較では

「大理石のほうが御影石よりも高い石が多い」ということになります。

しかし、御影石の中でも高価な石は一般的な大理石の価格よりも高い場合は多いので、注意が必要です。

安価にしようと御影石の中からチョイスしたが、大理石よりも高価だったということも起こりえるため、使用を検討する際は見積をとって各石種の単価を確認することをお勧めします。

石の価格を決定する要素としては「原産国(地理的・政治的)」「採掘数量」「供給体制」などがあります。

一年前までは安価に仕入れることができた石種でも、原産国が政治的に不安定になって供給が滞ったり、採掘場から良い材料が取れなくなり需供のバランスが崩れたりすると価格を押し上げてしまうので、こちらの注意が必要です。

仕上げによって価格は変わる

建築やインテリアに使用する石材のほとんどは板状(20mmや30mm)に切断した後、表面に仕上げを施します。

一般建材では「本磨き(表面を磨き上げ、鏡面のように光沢がある仕上げ)」や「J&P(石材表面を高温のガスバーナーであぶり、細かい結晶をはじくことで凹凸を出す仕上げ)」を使用します。そのほかにも表面を叩いて仕上げたり、特殊なブラシで研磨する仕上げなど様々で、使用する空間のバランスやトーンに合わせて選ばれます。

各仕上げの詳細はこちらをご確認ください。

各仕上げによって加工の費用が変わる為、価格を算出する場合はどのような仕上げにするかも確認が必要になります。

大きさと厚みによって価格は変わる

歩留まりとは「その材料からどれだけを製品として使用できるかの割合」のことを言います。

原材料を100とし、製品になる部分がその60%であった場合は「歩留まり60%」となります。歩留まりが高いほど原材料を余すことなく使用できるため、材料代を抑えることができ、歩留まりが低いと製品にならない部分の材料代が製品に加算されるため高くなってしまいます。

スラブ材から製品を切り出す場合を例に挙げると

 

スラブサイズ(製品有効サイズ):H2,000×W3,000mm(6㎡)

製品サイズ:H600×W900mm

制作数量:9枚(4.86㎡)

歩留まり:81%(製品4.86㎡/材料6㎡) となります。

 

写真の黒く囲った部分が製品となる部分、その周りは製品にはならず破棄される部分です。

この場合は囲った面積がスラブ材の81%で、破棄される部分が19%ということになります。

スラブサイズ(製品有効サイズ):H2,000×W3,000mm(6㎡)

製品サイズ:H800×W800mm

制作数量:6枚(3.84㎡)

歩留まり:64%(製品3.84㎡/材料6㎡) となります。

①と②では歩留まりが17%違い、同じ石種を使用した場合でも最終製品の価格が変わってきます。

また、歩留まりは単純に大きさだけで判断するのではなく、石の柄や色で使用の可否を判断する場合もあり、その時にある材料の色や模様によっても変動してきます。

このように一見すると均一に見える石の模様でも、石特融の“アザ”や“ふ”を外すように石取りをすると、その部分が製品には使用できず、歩留まりが下がっていきます。“アザ”や“ふ”は石の物性として問題があるわけではないので、意匠上の問題となります。このような模様が入っているほうがより天然らしいとして使用していただけると破棄する部分が少なくなるのでサスティナブルですが、避けられる傾向が強いのも事実です。

 

石の価格はこのような計算をもとに算出されるため、その都度の見積が必要になってきます。

納品場所によって価格は変わる

石材は重くて固いことが特徴です。それが見る方に「高級感」や「重厚感」を与えてくれるのですが、反面移動をすることが大変です。

石の重量は「面積×厚み×その石の比重」で求められます。

例えばよくある規格材で計算をしてみると

面積:400mm×400mm=0.16㎡

厚み:15mm=0.015m

比重:今回は2.7で計算します。

面積0.16㎡×厚み0.015m×比重2.7×1,000(㌧→㌕への単位変換)=6.48㎏ となります。

石1枚が≒6.5㎏です。これを6㎡(2m×3m)の壁に貼ろうと思った場合38枚必要になります。(割付のパターンで必要数量が変わります。今回は単純計算で試算しています)

38枚の重量は247kgとなります。家庭用冷蔵庫(400L)の重量が85㎏程度ですので、3台分ほどの重さになります。

見た目にはそれほど大きな梱包にはなりませんが、重量としてはかなり重くなります。

一般的な運送料金は「距離」と「重量」で算出されるため、重量が重いほど価格が高くなってしまう、ということになります。もちろん複数の配送をまとめて行ったり、合積みして価格を抑えることもできるので、運送コストの概算も確認をしておいたほうが良いと思います。

 

まとめ

石材の価格はわかりにくくどのようにオーダーすればよいかわからない部分が多いと思います。弊社では製品一枚からの問合せやオーダーも承っております。

まずは色や柄から石種をお選びいただき、概算の見積依頼やサンプル依頼等をいただきましたら、ご提案も含めて価格をご提示致します。

わからない部分や未確定の部分はご相談いただければ石のプロとして提案や解決策をご提示致します。

お気軽にお問合せください。