Column

社長の一石

2018. 12月

偽装体質はどうやって

今年の世相を表す漢字は「災」だそうですが、私はほかに「隠」を挙げたいです。

 

偽装のニュースは、古くは食品の賞味期限から始まり、今年は工業製品の検査偽装に及びましたし、ついには官僚組織の障害者雇用数の偽装報道までされました。組織の隠蔽体質を取り上げる報道が増え、それを改めるべき報道が増えた1年でした。

 

偽装だけでなく暴力問題では、相撲界だけでなくレスリングやアメフトの指導者の認識が問われるニュースも続きました。お互い様、と言う農耕文化で同一の行動を重視する日本の組織風土の大きなテーマではないか、とついつい大げさに考えてしまいます。

 

考えてみると、これだけ多くの事例があるのですから、問題点に蓋をして自分や組織を守ろうとする姿勢が、其々の組織で「意図的」に作られたと言うより、日本の組織はそういう事に陥りやすいシステムを持っている、と考えた方が良いかもしれません。すぐに、意識改革が必要だ!(ビッグワード)、と表現するのではなく、当社の場合どこにシステム障害があるのか、と客観的に分析していった方が良いと思います。

 

私が先ず、考えたいことは「組織が問題隠し的な姿勢を助長するルールや管理手法をとってないか」と言う点です。

 

過去、不良やクレームの発生削減を目標管理のテーマにしていましたが、目標を達成しようとするあまり、一定の基準を超えないと不良と見なさない・報告に上げない傾向が出ていたと思います。

 

減らすことだけを目標管理にすると、目標値をギリギリでクリアした部分は見なくなります。仮に、不良発生を1%以内と目標にしたら、1%のバーの攻防になるのです。

 

基準を超えた不良しか注目されず、その一歩手前の不具合に目が行かなくなる事を問題としたいです。嫌な部分を見たくない心理は誰の中にもありますから、悪い(兆候)を見逃すことに繋がります。

 

ほかの分野に目を向けると、安全管理がヒントになると思うので「品質」を「安全」に置き換えてみましょう。工場や現場では、労働災害の発生自体が大問題ですから、災害発生の一歩手前であるヒヤリハットに焦点をあてた活動をしていますが、品質においても不良発生前のヒヤリハットに注目できないか、と言う視点です。安全の「危険予知」を品質の「不良予知」と置き換えて考えていくのです。

 

そもそも○○%以内と言う不良目標は、○○%を許容する事になりますから、管理する意味はなく、それよりも不具合事例をもっともっと社内で共有した方が良いのです。ダメ出しを増やす事を奨励します。勿論、人や部門のせいにせず事柄として扱いながらです。

 

水の上に浮かぶ氷山を不良に例えると、目に見える氷山の一角の下に沈んでいる部分、ここが【品質のヒヤリハットの世界】です。ここに光を当てるのが大切です。不良になる前の不具合に焦点をあて、見える化して、皆でコントロールしていきましょう。

 

 

2018年12月