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STONE COLUMN

2021. 12. 2

石の美観を保つためにできること

石の美観を保つためにできること

建物や空間を新しく施工した際に「どうすれば長く美観を保てるか」ということが関心の多くの部分を占めることになります。この感覚は特に日本においての美意識、こだわりに関連している部分もありますが、多くの方はできるだけ新築当時のままできれいに長く空間を維持したい、と思われているはずです。

石材(大理石や御影石)にまつわる汚れやトラブルは常にこの課題と直面しており、正しい使用方法や保護処理をしなければ石本来の状態を保つことが難しい材料です。

石って固いけど、水を吸い込みます

石の扱いが難しい最大の原因は「石には吸水性がある」ということです。石は固く硬質であるイメージが強いですが、細かな細孔とよばれる穴があいています。これはどんな石でも共通です。もちろん石の種類によって吸水率の違いはありますが、天然石であれば必ず吸水性をもっています。

(石材の細孔構造)

 

この細孔構造に汚れた水分や油分などの液体が入り込むことで石が汚れた状態になります。

表面に付着しただけの汚れであればふき取り・清掃で除去できますが、石材内部に浸透してしまった汚れは簡単には除去することができず、美観を損ねる原因となってしまいます。

石の不具合事例

(床に敷きこんだ石の目地部分からエフロが発生)

(壁際の床面、立ち上がりから濡れ色が発生)

 

特に床面や壁の一段目は石取り付け時の裏込めモルタルの水分の影響を直接うけたり、床勾配の影響で水が集まって抜けるところがない状態になると、常に水分が石に供給され続け、このような石の汚れを引き起こす可能性があります。

水分の侵入を抑えること

先述の通り、「石には吸水性がある」という部分に対処することで問題を解決することになります。具体的には「石に水分が吸収されないように吸収経路を遮断する」ということになります。

一般的に処理の仕方として「裏面処理」と「表面処理」の2パターンになります。

①裏面処理

石材の裏側に樹脂製の塗膜を作り、裏面から水を吸い上げることを防止する処理剤です。

特に石が直接水分と接触する床面などで使用される方法です。石の裏側で物理的な水分との接触を遮断するので吸い上げ防止効果はありますが、石の小口部分は処理が難しく、その小口と目地部分から水分が染み込み、濡れシミやエフロの発生を引き起こします。

また、表面からの汚れは防止できないので注意が必要です。

②表面処理

石材表面に溶液を浸透させて石表面に浸透防止層を形成する処理剤です。石材表面から数ミリの層を形成して保護をするため、表面からの汚水の侵入を防ぎつつ、裏面や小口からの吸い上げを浸透防止層の手前でシャットします。表面に含浸層を形成するため、石種によっては外観変化を伴いますので、処理の有無についてご検討いただく場合はサンプル塗布を行っていただくことをお勧めいたします。

(裏面処理と表面処理のイメージ図)

 

もちろん表面処理をしたことで完全な防水、防汚になるものではありません。長時間水に接してると少しずつ浸透していきます。処理をしたうえで日常の定期メンテナンスをしっかりと行うことが結果として美観を長く保つことになります。

 

表面処理と裏面処理をまとめると下の図をなります。

処理剤の種類

市場には様々な処理剤がありますが、ここでは弊社の商品をご紹介します。

①ロングセラー商品 セキストンコート

2003年の販売開始以来、延べ60万㎡の実績と評価をいただいている商品です。天然石専用のフッ素シリコーン溶液です。自社開発の処理剤として、弊社で施工させていただく多くの建築でご採用いただいています。

(白砂岩の赤インク吸い上げ試験)

天端から数mmの浸透防止層が形成され、裏面からの吸い上げを止めています。

 

製品の詳細はこちらをご確認ください。

②ガラス化処理 グラストーン

石材表面から特殊な液状ガラスを浸透させて石材内部にガラス層を生成させます。石材表面の撥水・撥油に加え、通常汚れの付着後のふき取り除去性に優れています。こちらはセキストンコートよりも石材表面の外観変化の幅が大きいため、必ずサンプル確認をおこなってください。

 

製品の詳細はこちらをご確認ください。

良くお問合せをいただく両商品ですが、どちらの商材も「工場処理専用商品」となっており、処理剤の卸販売はお受けしておりません。石材の種類や特性、塗布環境などによって処理剤の適正量や塗布作業手順が異なる為、石材とセットで弊社工場の専用ラインにて施工させていただく場合に限らせていただいております。

石を長くお使いいただくために

石は本来自然の中にあり、水を吸収することはむしろ自然の中では当然のことです。水を染み込んだり、汚れることはそれ自体が悪いわけではなく、経年の変化としてとらえるという感覚はヨーロッパなどでは一般的な感覚です。それ故雨がかかる外部にも大理石、石灰石といった素材をそのままに積み上げることを自然に受け入れ、キッチンのカウンターにも大理石を使用することを許容しています。このような感覚でお使いいただくことももちろん可能ですが、より長く、石を愛でていただくための入り口として防汚処理をすることも実使用においては非常に有効なことだと思います。

 

既存の石のメンテナンス、汚れ落としや磨きなおし、張替などのリニューアル対応も行っております。

お気軽にお問合せください。