Column

社長の一石

2018. 3月

大理石模様の魅力

スポーツシューズが今人気で、ビジネスシーンで履いている人も見かけますが最近、とあるシューズショップのプロジェクトがあったので紹介したいと思います。そのショップは既にオープンしていて、そこの玄関がこんな形で仕上がっています。

商品を展示する前の石壁だけで見ると、こんな仕上がりでした。

壁の石は、アラベスカート・コルキアと言うイタリアの大理石です。白地にグレーの模様が、前後左右対照に展開されていて魅力的な壁に仕上がっています。沢山置いてあるシューズの見栄えを損なう事なく、むしろ商品のグレードアップに一役かっている様で、大理石を上手く活かしていただいてとても嬉しいです。

 

しかし、この模様、最初からデザインが決まっていたのではなく、プロジェクトを進めていく中でお客様と私達のコミュニケーションから生まれてきたものであって、全く別の模様になった可能性もあったのです。

 

そこでどうやってこの模様ができあがったのか、そのプロセスを見て行きましょう。

 

弊社は先ず、大理石を海外から原石で仕入れて、それを板に裁断しています。これがアラベスカート・コルキアの「原石」と「挽板」です。

厚みが1.5メートル前後もある原石の表と裏では、その模様は大きく変わるのですが2~3㎝に薄く切った挽板の隣どうしを見ると若干の変化はありますが、殆ど同じ模様に見えます。その利点を活かして、同じ模様のパズルの様に板を並べていく訳ですが、その並べ方を変えると、全く違ったパターンの模様が考案できるのです。このプロジェクトでは、使用する大理石の模様写真を使って3種類ほどの提案をしました。

 

先ずは、模様の向きを一方方向に並べていく方法(模様案A)です。

次に、上下左右対照に並べることで幾何学的な模様を創っていくことができる方法(模様案B・C)があります。同じ板を使いながら、並べ方で全く違う表情になります。

 

【模様案B】

【模様案C】

今回は、俊敏な動物の顔に似た模様が、スポーツシューズのイメージに合うと言う事で【模様案C】が採用された様です。

 

別の模様になったかもしれない理由が理解いただけたでしょうか。

 

社内には、この様な石の模様展開をする【墨出し工程】があり専門社員がいます。プロジェクトによって壁の面積も違えば、原石の体積、挽板のサイズも毎回違います。しかも天然石なので模様も千差万別。石とは一期一会の出会いで壁を描いていく彼らの仕事は芸術的でもあり、魅力的な仕事と言えるでしょう。

 

大理石の模様の展開案をいくつか示して、1つの壁がどういうデザインに仕上がって行くかは、石屋としての醍醐味なのですが、一般の方にあまり認知されていないので、こういう紹介を通して理解を深めていただけると嬉しいです。

 

 

2018年 3月